ZOZO前澤社長は服を売っているけど服屋ではない
こんにちは、ササクレです。
最近何かと話題になるこの人。
前澤社長。
別に雲の上の更に上の月に行こうとしている人からしたら私のようなtoCのサービス業の人間なんて点としても見えていないと思うので敢えてはっきり言うと、私はこの人が苦手です。
私は、このツイートを読んで、「あ、苦手。というか、違う世界の人なんだな。」と気付きました。
住む世界が違えば、言語も文化も思想も違うからもはや存在しないも同義。
しかし、このZOZO帝国は間違いなくアパレルの世界に戦争を仕掛けてきている。
今回、ササクレが感じた脅威とは。
【目次】
①衣食住と文化
②服が売れない時代に見えた新しい道
③ZOZO帝国の野望
④個性のない世界
①衣食住と文化
衣食住としての衣服
みなさん、今着ている服・下着に穴空いてます?シミだらけですか?それとも衛生的ですか?恐らく、このブログを読める設備を所持している方々はお洒落かダサいかは別として衛生的で最低限心地よい状態の洋服、下着を身につけているのではないかと思います。
第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
日本国憲法で守られているからですね。
「外に出た時に恥ずかしくない」
最低限の文化的ラインはここなのかなと思います。
これが当たり前という前提の日本って本当に豊かだなと思うのです。
そして、ここ10年でその質はとても向上しているなぁとも感じます。
所謂ファストファッションですね。この業態がなければ経済格差による衣服の満足度が今よりも大きく開いていたかもしれません。
ファッションを楽しむ文化を身近にし、最低限度の生活のラインを向上させた事は素晴らしい功績だと思います。
文化としての衣服
そんなファストファッションの対局にいるのが「ラグジュアリーブランド」です。
歴史があまりにも長いので、簡単に説明すると
もともと王室などの権力者達の為に完全オーダーメイドで世界に1つしかないデザインを1人の顧客の為に作る職人達がいました。
それを貴族レベルの人達でも手に入れる事が出来るようにメゾンが誕生しました。
メゾンとは
フランス語で「家、建物」の意であるが、ファッション業界では会社、または店などの意味で使われる。特に「オートクチュールの店」のことを「メゾン・ド・クチュール(maison de couture)」という。
これらのビッグメゾンが毎年パリでショーで新作を発表し、トレンドが発信され、メディア、インフルエンサーなどの発信力のある人達がトレンドを発信し、一般的なブランドやファストファッションにデザインが降りてきて私達の普段着となっていきます。
王室の為の物から貴族達一人一人のオートクチュールから始まり、プレタポルテという形を経て現代では様々な形で私達にファッションという文化が広がっていきました。
② 服が売れない時代に見えた新しい道
欲しいものがない。接客されたくない。選ぶのもめんどくさい。経済的理由の他に様々な声の中で店舗での売上は落ちていっています。そんな中、Amazonの台頭によりネット通販がとても身近になった事でEC事業が急速に加速しました。販売においてまず落としたくないのが客数。単価はコントロール出来ても買い上げ客数を目標に持っていくのって本当に大変なんです。そんな中各ブランドもECに力を入れてきた中でZOZOTOWN。
キーワード検索するだけでたくさんのブランドのアイテムを見比べられる。WEARと連動することでコーディネートをそのまま買えたり、しかも店頭で買うよりも安い。
限りなく消費者側に寄り添った販売体系で10代、20代のファッションに敏感な世代とスマホ世代のマッチングで瞬く間に人気になりましたね。
私が店頭に立っていた時もZOZOで買うので試着だけしたいというお客様もいました。
私はインポートブランドでZOZOに参入していないブランドでしたが並行輸入をしている業者がお買い得に出していたようでした。
会社の売上にはならないけど、ブランドのファンには変わりないので自社のお客様と同じパワーで接客し、時にはZOZOを見ながらアドバイスなどもしていました。
こうしてECが当たり前、ZOZOで調べてからショップへというスマホの普及前ではあり得ない新しい販路が確立された時代が到来しました。
しかし、ショップには間違いなく毎日お客様が来ます。体験型ショッピングの価値はお店でしか提供できません。
サイズ、色、シルエットが似合うか。自分が調べていた以外のデザインとの出会いもリアルショッピングならではの楽しみです。
そんな価値を提供したいという思いの中登場したのが
ZOZOスーツです。
自分の体に完璧にあった服をオーダーメイドで届ける。
まさにオーダーメイドの一般化ですね。
しかし、結果は失敗。
先日下方修正の会見がありましたね。
何故、誰もが憧れるオーダーアイテムを頼まなかったのでしょうか。
③ZOZO帝国の野望
ブランド、デザイン、生地をクリック1つで選んであなただけの服をお届け。
夢のようですね。
一生夢であって欲しい。
まず、そこまでオーダーしたらもはやブランドなんて必要ありません。
世界観を作り出し、そこからデザインが生まれ、生地、色、型を選び服が生まれる。
言うなればワタシブランドでしょうか。
今まで作りあげた歴史を無視してロゴは貸してねー。
サイズはZOZOスーツでジャストフィット!
もしそんな世の中だったら萌え袖もスキニーも
ガウチョも誕生していなかったかもしれません。
そもそもサイズが合えば似合うというものでもない。脚が短い人にジャストサイズを合わせても目立つだけ。肩幅がない人にただラグランを合わせても情けなく見える。
そんな色んな計算をしながらお客様の表情を見てそのお客様のベストコーディネートを探し出す。テーラーさんもそう。オーダーメイドだとしても、お客様の言いなりだけでは作らない。たくさんの知識をフル活用して最高の1着を仕立てている。
私はZOZOはファッションの文化を全否定していると感じてしまったのです。
過去のデザイナー達が作りあげたメゾン、そのスピリットを引き継ぎ、現代でも表現し続ける新たなデザイナー。
彼らの功績を無視しているように感じてしまうのです。
もちろん自分にぴったりの服を着るのは気持ちがいい。でも、私は好きなブランドの世界観を身に纏い、その雰囲気の人間になれたような高揚感も好きなのです。
もしもZOZO帝国の侵略が進んだら誰もが憧れるデザイン豊かなファッションは消えてしまうでしょう。
デザイナーの彼らは間違いなくプロです。
一瞬で人を魅了し、億を稼ぐプロです。
そんな人達以上のデザインを自分でクリック1つで作ろうとは思わない。
④個性のない世界
クリック1つで好きな服を好きなブランドのロゴを貼り付けて買える世界。もう、そこにブランドロゴの価値は無くなっているでしょう。すぐに手に入る物に憧れは感じません。
生地もデザインも結局誰かが作ったやつと同じ物が欲しくなるでしょう。
みんなZOZOのマークが入った個性的なようで無個性な服を着ている時代。
そんな小さな世界ZOZO帝国の中からまたココシャネルやユベールドジバンシィのような革新的なデザインを発表し誰もが憧れるメゾンが誕生するでしょう。ファッションの世界は力強い。何故下代2000円の服が10000円になるのか。それを理解できる人ならこのZOZO帝国の脆さを感じていると思います。
ただ、物流ビジネスとしては世界中の好きな服を好きな時に買える時代が来たら楽しそうだなって思う。ZOZOロジスティックに期待したい。